月別アーカイブ: 2012年1月

NHKニュースの経済感覚

 NHK NEWS WEBというサイトにどうなる・貿易立国・日本という記事が載っていました。サイトの説明を見ると、NHKのニュース番組で流されたものをWEBページにまとめたもののようです。
 読んでみたのですが、冒頭からいきなり度肝を抜かれました。なんと、日本が31年ぶりの貿易赤字となりました。 戦後、経済成長を続けてきた「貿易立国・日本」は、これからどうなるのか。という言葉で始まっているのです。
 確かに、戦後に日本が経済成長を続けていた時期はありました。しかし、そのようなものは20年以上前に終わっています。その後、バブル崩壊から「失われた20年」を経て現在に至っているわけです。

 さらに、追い打ちをかけるように、日本の貿易黒字は高度経済成長などと重なります。黒字が始まった1981年(昭和56年)輸出の主役は自動車や電機製品などの組み立て産業でした。などとなんか2010年まで高度経済成長が続いていたかのように報じています。
 一方で、その数行後には、バブル崩壊による国内景気の低迷、アジア通貨危機、ITバブルの崩壊、資源価格の高騰、中国など新興国の台頭、そして、リーマンショックによる世界的な景気悪化など何度も危機が襲いましたが、貿易黒字を続けてきました。と書かれています。
 ここで挙げたマイナス要因は、「高度経済成長など」とは似ても似つかないものです。つまり、ちょっと前で述べた「日本の貿易黒字は高度経済成長などと重なります。」と整合性がまったく取れていません。

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「経済は一流」という遺物

 1980年代の新聞でよく見かけた標語に「日本は経済は一流、政治は三流」というものがありました。「経済大国になった事から分かるように、日本はの経済は一流だが、不祥事を起こす事からも分かるように政治家は三流だ」という主張です。
 実際にGNP(当時)などで示される指標は好調でした。一方の政治のほうは汚職事件などがよく報じられていました。特に、その代表格で刑事事件で有罪判決が下された故・田中角栄氏が相変わらず政権政党である自民党を牛耳っている、というような状況でした。
 それゆえに、この標語は当時の多くの人に信じられていたようです。

 この思想が拡大され、「政治家・官僚の主張・施策には間違いもあるが、日本経済を一流にした財界の行動・主張は正しい」という事が常識であるかのように報じられました。
 そのため、最も収益力があったトヨタが採用したシステムは、完璧に正しいものであるかのように伝えられました。また、メザシが好物だった経団連会長は、庶民の救世主であるかのようにもてはやされました。
 そして、「政治や国営および公営事業は間違いだ。民間企業のやり方を導入すべきだ」「財界の主張に従えば間違いない」というような「世論」が形成されました。これらの根底には「政治は三流だが経済は一流」という理念があったと思われます。

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