国家公認の「国民に不利益をもたらす法案」

 教育基本法「改正案」が衆院で強行採決されました。これまでも、与党が強行採決して成立した法案は多々ありますが、いずれも一般国民にとって益はなくても害のある法案ばかりです。その経緯だけ見ても、今回の「改正案」が一般国民にとってどのようなものなのか分かるとしたものです。
 それだけでも十分と言えば十分ですが、今回の法案がいかに「一般国民にとって有害であるか」という事に関して、自民党政府はさらなる「お墨付き」を与えています。すなわち、タウンミーティングでの「質問ねつ造」です。
 この件は、内閣府と文科省が共謀して行ったとのことです。言うまでもなく、仮に一般国民にとって益のある法案だったら、わざわざ綿密な台本を作って、質問をねつ造させる必要はありません。頼まれなくても参加者がその法案に賛意を示してくれます。すなわち、自民党政府自らがこの「改正案」が一般国民にとって有害無益だと証明しているわけです。

 さらにつけ加えると、安倍首相はこの法案に関して「教育再生」とうたっています。自民党政府の要人で、特に「タカ派」と呼ばれる人は、常日頃から「戦後教育」を目の敵にしていました。教育基本法の理念はともかく、結果的に自民党の長期政権を維持させるように国民を「教育」した戦後教育になぜ自民党政府が満足しないのか不思議ではあります。まあ、今後、自民党政府の目指す日本においては、あれではまだ物足りないのでしょう。
 いずれにせよ、戦後教育に不満を持ち、「教育再生」をうたう以上、彼らが「再生」させようとしているのが戦前教育であることは疑う余地がありません。すなわち、国民の多くが兵士となって命がけで侵略戦争に荷担させられ、国内に残った人も天皇制政府の誤った政策により貧しい生活を余儀されなくなりながら、「欲しがりません勝つまでは」などと言う標語に従うような「成果」が現れるような「教育」です。
 何度か書いていますが、あの「日本全体が悲惨」と思われがちな戦時下にも「勝ち組」はいました。たとえば、好戦的言動で知られる麻生外相は日本の侵略戦争や植民地政策を大いに活用してのし上がった企業を経営しています。
 さらに、安倍首相が尊敬してやまない祖父である岸元首相なども、天皇制政府で閣僚をつとめていました。そしてA級戦犯として一時投獄されるも、アメリカの政策転換もあって政界に復帰して首相となりました。そこで行った事はアメリカのために新安保条約成立に尽力でした。
 戦前教育により「鬼畜米英」と信じ込まされて米軍と戦って殺された人にとって、この「かつて『鬼畜米英』をとなえた側の人間がアメリカに忠誠をつくす」という姿はたまったものではないでしょう。しかし、国を戦争に導いて利益を挙げる事ができる人にとっては、そのような一般国民の生命など眼中にはありません。また、そのような「教育」をほどこされた人間が、自分の収益のために死んでくれる事は、極めて都合のいい事です。だからこそ「再生」したくもなるのでしょう。

 昨年の衆院選の際の自民党選挙公約において、教育基本法に関する事は、2行程度の記載でした。これは「郵政民営化」に比べれば段違いの小さい扱いでした。政権公約に占める比率がその程度なら、何もタウンミーティングで質問をねつ造したり、強行採決をするなどする必要はないはずです。
 逆に言えば、「郵政」の陰で目立たせないようにしながら、昨年の衆院選で得た議席数をもちいて強行採決しているわけです。こうやって調べれば調べるほど、自民党政府がいかにこの法案が一般国民に不利益をもたらすか分かっていて、なおかつ強引にでも成立させたがっているのか非常によくわかります。

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