スポーツ紙による選挙運動

 Googleニュースを見たら、都知事選挙の最終日の模様なる各スポーツ紙の記事がありました。なんか、黒川候補が「乱入」した「事件」を報じているようにも見えますが、内容は石原氏の主張をそのまま載せているだけ。例の「身内の重用や高額の税金での旅行や飲み歩き」も「説明が足りなかった。反省しています」と謙虚な姿勢をアピールして戦った。などと書いています。
 対立候補からは、この「釈明」は、行為の説明について「反省」しているだけで、行為そのものは肯定している、と批判されています。しかし、そのような事は記事には一切ありません。さらに、黒川候補の「乱入」にかこつけて、今は亡き人気俳優の家族の名前まで出して、石原氏を「応援」していました。

 もちろん、今回の都知事選挙では、石原氏の政治姿勢を正面から批判するのは共産党推薦候補だけ、しかもその候補の知名度は低く、客観的に見て厳しいものがありました。さらに、万が一、税金浪費の批判が予想以上に高かった場合の「保険」のような形で、民主党がほぼ同じ政治姿勢の候補を担ぎ出すという、念の入れぶり。自・公・民の保守政党が協力して「石原的都政」を維持したわけです。したがって、このようなスポーツ紙の「応援」が都知事選挙の結果に影響を及ぼしたわけではありません。
 だからと言って、このような事が起きている事は軽視できません。これがもし、本当に成否がギリギリという案件が投票にかけられた場合に、商業マスコミは同じ手段を使える、という事を意味するからです。
 具体的に言うと、自民党政府が成立させようとしている、憲法改悪のための「国民投票」があります。当然ながら、商業マスコミは、その「改憲」が目指すさらなる軍事力増大並びに国民の権利制限についてはまともに論じないでしょう。
 そして、仮に「接戦」になった時、「最終日の安倍首相」を報じるという形式で、自民党政府の言い分だけを載せた記事が投票日の朝のスポーツ紙に掲載されたらどのような効果を及ぼすのでしょうか。
 改めて、現在の商業マスコミの持つ70年前と何ら変わらない危険性と、建前だけの「不偏不党」を実感させられた、投票当日の「応援記事」でした。