「悪い方向」に進んだ理由

 内閣府が31日発表した「社会意識に関する世論調査」によると、現在の日本で「悪い方向に向かっている分野」(複数回答)を聞いたところ、「教育」と回答した人が昨年の前回調査より12.3ポイント増の36.1%で、初めてトップになった。という発表記事がありました。
 この発表を報じた記事を見ると、「教育が悪い方向に行っている理由」についての調査結果はないようです。ところがなぜか、その原因として「学力低下」「いじめ」さらには、一部マスコミが勝手に煽っただけの「必修科目未履修問題」などを、勝手に「理由」として分析しています。
 だいたい、「学力低下」や「いじめ」は今になって始まった事なのでしょうか。「分数の計算ができない中学生がいる」という記事を読んだのは、もう10年くらい前だったと記憶しています。「いじめ自殺」に至っては、特に大きく報じられた「葬式ごっこ自殺」などはもう20年以上前の話です。そこから何ら改善がなされず、現在に継続されているだけの話です。


 こう考えると、「昨年に比べて『教育』が悪い方向に進んでいる」という結果に対して、報道機関が勝手に分析した「理由」が、いかに見当外れなのかよくわかります。

 昨年と今年で調査結果の数字が大幅に変動したというなら、その理由はこの一年間で起きた大きな出来事が影響した、と考えるのが普通です(※内閣府の調査結果自体、はっきり言って信頼に値するとは思いませんが、ここではそれは別問題とし、一応、データが正しいという前提で話を進めます)。
 もちろん、この一年で起きた、教育関係の最大の出来事とは「教育基本法改悪」です、さらにそれと同じ流れにあるものとして、「教育再生会議」の提言などもあるのかもしれません。
 今回の教育基本法改悪は、「自民党政府による教育の支配」「自民党政府の意向にあった内容の教育」が目的です。さらに、その成立の際には、「タウンミーティングでの世論ねつ造」「それらの問題をうやむやにしたままの強行採決による成立」などがあります。そんな物騒な事が行われれば、確かに「悪い方向に向かっているもの」で教育が躍進するのは当然でしょう。

 にも関わらず、各社の記事では「教育基本法」という文字はどこにもありません。そして、自民党政府がさらなう教育改悪のダシにしようとしている、今に始まったわけでない問題ばかりを勝手に「原因」にしてしまっています。
 まあ、タウンミーティングでの世論ねつ造を行ったのは、今回の調査発表を行った内閣府でした。いわば、「悪い方向に向けた首謀者」であるわけです。そして、今の自民党政府と報道産業の関係からすれば、その意向に沿った「原因分析記事」が出るのも当然とは言えるでしょう。
 というわけで、このような「調査結果」が出たところで、自民党政府が教育に関する政策を見直す事はないでしょう。それどころか、むしろより一層、「悪い方向」へ進めようとするに違いありません。