沖縄戦を「誤解」させようとする勢力

 1945年に行われた沖縄での戦争で、日本軍が沖縄の住民に「集団自決」を強いた事が文部科学省の検定で削除されました。その結果、沖縄を中心に大規模な検定撤回運動が起きました。しかし、「集団自決」について、ある程度の譲歩は見られたものの、「軍の命令により、住民が『自決』を強いられた」という記述は、やはり検定を通りませんでした。
 日本がかつて行った戦争に関する教科書検定は、一貫して当時の天皇制政府および日本軍の行動を美化しようとしています。私が中学生だった頃には、「侵略」を「進出」に書き換えさせるような「検定」が行われた、という事が話題になりました。おかげさまで、教科書を読みながら、天皇制政府がアジアを侵略した事のみならず、文部省(当時)が「侵略」という事実を隠蔽しようとしている事まで学ぶことができました。そのような文部省(当時)の「政治的立場」を知ることができた、という点においてのみ、検定には価値があると、当時も今も思っています。

 一応、文科省の言葉によると、「日本軍のために沖縄住民は『集団自決』を強いられた」というのは、教科書を読む高校生に誤解を招くのだそうです。誤解というのは、事実と異なる認識をしてしまう事です。
 彼らが「自決」を強いられたのは、沖縄で地上戦を行うにあたり、仮に住民が捕虜になって情報が伝わると戦闘に不利になる。ならば捕虜になるくらいなら死んでもらったほうが都合がいい、という日本軍の判断によって発生した、というのが私の認識です。
 文科省の主張を見ていると、どうやらこの認識は「誤解」だと言いたいそうです。ならば彼らは何を「事実」だと認識しているのでしょうか。まさか、アメリカ軍を恐れて彼らが自主的に「集団自決」をしたとでも言いたいのでしょうか。ならば、同じ1945年に実際にアメリカ軍が日本征服を行った際に、なぜ東京を初めとする各地で沖縄と同規模の「集団自決」が発生しなかったか、なども含め、「誤解」のないように説明してほしいものです。

 結果的に、今回の検定および、批判に対する文科省の対応を見ると、かつての「侵略→進出」以上に、彼らの思想がより戦前に回帰している事が伝わってきます。沖縄戦における、自民党政府の考え方を示すためにも、今回の一連のやりとりを教科書に掲載すればいいのでは、とも思いました。
 なお、沖縄戦において、日本軍が住民をどのように扱っていたかについては、当ブログ長文集ひめゆりの塔に、体験者の談話も含めて記載しております。よろしければご参照ください。