「税金泥棒」叩きの二重基準

 東京の税金を1,000億円投入して作った「新銀行東京」の経営が悪化しました。この銀行創設を公約にして当選した石原都知事は、責任を他人に押しつけるようは発言を連発しています。そして、やっと出てきた謝罪の言葉は「都民に心配をかけたことをお詫びしたい」でした。
 そして「お詫び」と同時に、400億円もの税金をさらにつぎ込む事決まりました。
 石原都知事といえば、以前から、公費での海外旅行が何度も問題になっていました。つまり、「普段から公費で桁違いの遊興していた公務員が、1,400億円もの税金を無駄にしようとしている」わけです。これほどの「税金泥棒」はなかなか存在しないでしょう。

 普通の公的機関で、このような税金の使い方をすれば、マスコミがかならず根掘り葉掘り記事にします。社会保険庁の時などは、草野球大会の開催だの、将棋盤の購入などまで調べ上げられて、紙面を飾りました。
 ところが、今回の報道はかなり異なります。さすがに、石原知事を正当化するまではいっていません。しかし、その発言にあわせて「旧経営陣の独走」などという記事は書くものの、その「旧経営陣」と石原知事の関係については、突っ込んだ記事などは書きません。
 また、現在石原都政が力を入れている「東京五輪招致運動」という問題があります。この五輪開催にかかる経費はかなり低く見積もられています。しかしながら、今回の事例で考えれば、その見積額の信頼性はかなり低いと考えるのが普通です。さらなる「税金の無駄遣い」が発生する危険性が十二分にあるわけです。しかしながら、その問題に触れた記事などどこにもありません。

 あれだけ、税金を無駄に使いながら、過去・未来については何らふれず、今まさに起きている現在の新銀行問題についても、傍観的な記事しか出さないわけです。普段の重箱の隅をつつくような「公務員攻撃」と、なぜここまで違うのでしょうか。
 例えば、これまで石原都政にめざましい功績があり、都民に対し、1,400億円を越える生活の向上を生み出した、というのならまだ分かります。
 しかし、石原知事に特に好意的な産経新聞を見ても、「長所」として挙げたのは国にも歯に衣(きぬ)着せずに物申す姿勢と、強力な指導力で脚光を浴びてきた。などといったものでした。
 別に「国にも」などと言っても、相手は自民党政府ですから、かつての「派閥の長」に取っては「後輩に対して威張っている」というだけの事です。そして、「強力な指導力」とやらの象徴の一つが「新銀行東京」なわけです。そう考えれば、この「評価」に何ら意味はありません。
 にも関わらず、無駄にした税金の額に比べ、穏便な批判しかされていません。それが人脈によるものなのか、右派マスコミが喜びそうな言動を連発しているためなのかは分かりません。
 いずれにせよ、これまでマスコミがやってきた「税金浪費批判」が、相手を選んでやっている事、さらには「税金を無駄にしたこと」自体を批判しているわけではないことがよく分かりました。