経団連が提示する「選択肢」

 経団連がまた安定的な社会保障制度を確立するには消費税の引き上げ以外に選択肢はないなどと「提言」したそうです。
 消費税が創設されたのは1989年で、1995年には5%に税率が上がりました。しかしながら、その20年近くの間、日本の福祉が向上はしていません。それどころか、「介護保険」「障害者自立支援法」「後期高齢者医療制度」など、制度が変る度に、負担が増えるばかりです。

 そのような現実がありながらも、経団連は「消費税を上げないと、社会保障は不安定になる」などと言っているわけです。これまでの税率でできなかった「安定的な社会保障制度制度」が、なぜ税率を上げるとできるのか、普通に考えれば理解できません。ましてや、「しか選択肢がない」そうです。
 しかし、世の中には他にも色々な税金が存在します。したがって、法人税率を上げるとか、累進課税を行なうなどの「選択肢」は存在しえるわけです。そう考えると、経団連という団体は、極めて視野が狭く、考え方も硬直していると言わざるをえません。
 にも関わらず、そのような暴論を用いて消費税率を上げようとするのには、このような場では絶対に言わない真の理由があります。過去20年近くの消費税収の合計は、法人税減税分の合計とほぼ同じです。つまり、経団連を構成する企業がより儲けるためには、消費税率をより上げて、代わりに法人税率を下げるのが一番手っ取り早いわけです。

 つまり、冒頭に挙げた経団連の発言には、重大な本音が隠されているわけです。それは、「財界の儲けをより向上させるためには、消費税率の引き上げを国民に押しつけるのが最善」とでもなるのでしょうか。
 なお、彼らが脅しのように使っている社会保障制度の安定ですが、民衆の不満が爆発寸前にでもならない限り、彼らにとってはどうでもいい事です。
 別に、社会保障を受けねばならないような定収入の人がどうなろうと、彼らにとっては知ったことではありません。何しろ、擬装請負をとがめられたら、「それが違反である事がおかしい」というような事を言って開き直る人がトップにいる団体なのです。

 まだ、高度経済成長期ならば、ある程度企業の利益増と国民生活の向上は比例していました。しかしながら、現代にそれは当てはまりません。企業の儲けを維持するために行なわれることは、いかに低人件費で働く人をこきつかうか、です。したがって、大企業がいくら儲けを上げても、それは国民生活にとって何の利益にもなりません。
 そうやって考えていけば、「安定した社会保障制度を維持する」ための選択肢は、いくらでもある事が分かるでしょう。そのうちの「消費税の引き上げ」は、数多い「選択肢」のうち、財界にとってもっとも得で、一般国民にとってもっとも損なものでしかありません。他にもいくらでも「選択肢」はあります。

経団連が提示する「選択肢」」への1件のフィードバック

  1. はたして民主党は「使える道具」だろうか

    村野瀬玲奈さんより下記エントリーのTBをいただきました。 政党を「支持する対象」とは考えずに、「使う道具」と考えたら? http://muranoser

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