「政権選択選挙」と「郵政選挙」

 先月、衆議院の解散が決まった時から、各マスコミは「政権選択選挙」とあおり立てています。そして、民主党の「政権交代によって官僚政治を打破する」というスローガンが報じられています。
 一方、前回の総選挙は「郵政選挙」でした。そして、当時の自民党のサイトには「官から民へ」を実現するためには、この選挙に勝たなければなりません。もし敗れれば改革はストップし、「官主導」「役人天国」が続くことになりかねません。郵政民営化はあらゆる改革につながります。などと書かれていました。
 こうやって比較してみると、言っている事はさほど変わりません。

 いずれにせよ、前回は「郵政」を旗印にした自民党が圧勝しました。その結果行なわれた「郵政民営化」は、地方の簡易郵便局廃止に代表される郵政サービスの低下と、三井住友やオリックスが利権で儲けた事くらいが「成果」となっています。
 一方、その「全ての改革につながる」とされた自民党の勝利は、結果として何をもたらしたのでしょうか。
 「史上最長の好景気」とうたわれながら広がった格差は、世界大不況によって一層広がりました。「派遣切り」「派遣村」などという言葉が話題になり、自殺者数も増える一方です。
 そのような状況に国民が不満を感じているからこそ、「政権交代」を掲げる民主党の人気が高いのでしょう。しかし、その期待に応えることが民主党にできるのでしょうか。

 4年前の自民党も、今の民主党も、国民が逼塞している現状を「官僚支配」のせいであるとしています。しかし、それは事実なのでしょうか。
 もちろん、現在の自民党政治を執行するに当たって、官僚体制が重要な役割をしているのは事実です。
 しかし、その方向性を決めたのは、官僚だけではありません。むしろ、方向性を決めていたのは財界です。この事は、一連の自民党政府の政策が、収入の低い人を犠牲にすることによって、大企業の収益を維持するものだった事からも分かります。
 一応、それを意識しているのか、民主党は「三年後の企業献金廃止」などと主張してはいます。しかし、「そのため、まず今回の選挙から、企業献金の要請を減らした」などという事はありません。
 さらに言うなら、現在の民主党幹部も多数参画していた、16年前の「政権交代」の時も、企業献金の廃止を当初は言っていました。しかしながら、その結果は、「企業献金廃止の補填」を建前とした政党助成金制度の成立と、「企業献金の存続」でした。
 その結果、自民党・民主党ともども、財界・税金の双方から多額の資金を得る、という構造になっているわけです。
 この事を考えれば、「政権交代」が実現したところで、国民の生活を犠牲に、財界の冨を維持する、という今の政治の本質がが変わるとは思いがたいものがあります。
 自民党とマスコミが煽り立てた「郵政民営化による官僚政治の打破」の正体は「郵政民営化による、より一層の財界政治の強化」だった事は既に実証されています。では、民主党とマスコミが煽り立てている「政権交代による官僚政治の打破」の正体はそれと異なるのでしょうか。前回のの「政権交代」や、これまでの民主党の「実績」を見る限り、とてもそうとは思えません。

「政権選択選挙」と「郵政選挙」」への1件のフィードバック

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