JR西日本にとっての「安全」

 2005年4月に発生した、福知山線脱線事故において、JR西日本の幹部が、事故を調査した運輸安全委員会の委員長などに接触していた事が明るみになりました。
 目的は、そこで論じられている内容を入手し、ATS未設置など、JR西日本にとって不利になる記述を削除させる事でした。つまり、不正な手段を使って、自社の損失を少しでも減らそうとしたわけです。

 それだけでも大問題ですが、事が明るみになった際の記者会見で、工作を行なったJR西日本幹部の言い訳はより一層問題だと思いました。それは、「少しでも早く情報を得て、安全対策に生かしたい(ために工作活動を行なった)」というものです。
 少しでも不正行為の印象を和らげるために、「安全対策」という言葉を使ったのでしょう。しかし、言うまでもなく、不正な手段を使っての「安全対策」などありえません。
 だいたい乗客の安全を守るための対策を入手したいなら、そんな委員会に裏で接触する必要などないでしょう。現場にはJRの乗客安全軽視を批判している社員はいくらでもいます。そのようは人達に教えを請えばいいだけの話です。そうすれば、やましい手段を取ることなく、乗客を安全にする手段をいくらでも入手することができます。

 ここまで考えれば解るように、会見で口にした「安全対策」は「乗客の安全を守るための対策」ではありません。では、誰のための「安全対策」なのでしょうか。
 明るみになった一連の行動は、全て、彼らの保身のために行なったことです。つまり、あの会見で言った「安全」は、「乗客のため」でなく、「自分たちのため」であったわけです。
 こう考えれば、これまでずっとJRが、何か事故が発生するたびに「安全」を声高に言いながら、乗客の安全を軽視し、収益を優先する経営を続けていた理由がよく分かります。
 これからも、西日本を初めとするJR各社の幹部は、何かある度に「我が社の最大の経営理念は安全だ」などと宣伝するでしょう。
 そして、そのような「自分たちの安全」と「収益」を重視する経営が続く限りは、乗客の安全は、常に後回しにされ続けることでしょう。