2020年2月19日に、マスコミ各社が、「神戸市の児童相談所に深夜、小学生が助けを求めて訪ねたが、宿直の人はインターフォン越しに、警察に行くように促した、という「事件」を報道しました。
各紙の報道を見ると、「当直義務を請け負うNPO法人の職員が対応し、マニュアルに反した対応をした」などと、いかにも、当直していた人が誤りをおかした、という「報道」になっていました。
しかし、これらの「報道」は今回の事件の本質とかけ離れた、極めて皮相的なものでしかありませんでした。
この問題の本質は、「職員の不適切な対応」ではありませんでした。
それを明らかにしたのは、これらの報道があったその2月19日に開催された神戸市議会における、日本共産党の味口としゆき市議の質問でした。
そこで、味口市議は、この当直していた「職員」は、児童福祉司などの資格を持っておらず、子どもを保護する権限がなかった事を明らかにしました。
つまり、問題なのは、当直していた人の対応ではありませんでした。重要な仕事であるにも関わらず、専門職としての資格もなければ権限もない「有償ボランティア」に児童相談所の当直をさせていた神戸市だった事が明らかになったのです。
しかし、事件が明らかになった日とは違い、この事実を報道したのは、「しんぶん赤旗」くらいでした。
この記事をツイッターで紹介すると、大きな反響がありました。2万4千回以上リツイートされ、2万9千個以上の「いいね」がつきました。
投稿記事は358万回以上、添付した赤旗記事は28万9千回以上閲覧されました。
また、多くの方から、「マスコミが報じていない本当の事がわかった」などという反響をいただきました。
なお、味口市議は翌週の議会でもこの問題を取り上げ、ブログで紹介しています。
この当直業務は「有償ボランティア」という形になっています。そのため、「謝礼」も極めて安く、時給換算で562円になります。
兵庫県の最低賃金は現在899円です。深夜割増を加算すると1,124円ですから、ちょうど半額になります。
「ボランティア」だから、という口実で最低限支払わねばならない賃金の半分しか払っていないわけです。
そのような賃金体系で児童相談所を運営しようとする神戸市はあまりにも異常だと言わざるを得ません。
この前提もなく、「追い返した」「マニュアル通りに動かなかった」などと当直者個人を批判する報道は完全に誤りです。
ところが、当初大きく報じた商業マスコミの記事はネットで検索すると今でもいくらでも出てきます。しかし、この味口市議が明らかにした事実を報じた記事は、いくら検索しても出てきません。ネットで見れるのは、このブログに添付した「しんぶん赤旗」の画像だけです。
リンク先の味口市議のブログを読むとわかるように、神戸市はこのような「公務の経費削減」を大々的に行ってきました。
その結果、確かに人件費は節約できました。しかし、このように夜に児童相談所に助けを求めて来る子どもの安全が守れなくなったわけです。
もちろん、これは神戸だけの話ではありません。筆者の住む千葉県・千葉市でも、公務員の人件費削減が行われ、その結果、行政サービスが大幅に低下しました。
千葉県庁近くでは、かつて県庁職員を対象に営業していた飲食店が大幅に減少するなど、「負の経済効果」が発生しています。
筆者自身も、生活の事で、千葉市の区役所に電話したら、14コール目でやっと人が出た、という事がありました。また、生活保障関係の部署が区役所から外され、市役所に統合された結果、相談に行くのに高い交通費を払っていかざるを得なくなった知人もいます。
しかしながら、商業マスコミは、今回の件のように、行政機関が公務員の人数や人件費を過剰に削減した結果発生した事件であっても、現場にいる個人の責任であるかのように報じ、本質的な原因は報じません。
このような状況を変えない限り、今回のような事件はますます増えるでしょう。その結果、虐待を受けている子どもをはじめ、多くの人が安全に暮らせない社会になっていくこと間違いありません。
2020年3月5日追記
味口市議のブログに、該当質疑の文字起こしが掲載されました。
神戸市当局の無責任さと酷さは、これまでの想像以上のものでした。