マスコミが「常識」と主張するものの検証

 政治・経済における重要な問題において、しばしば大手マスコミは「○○であるのは当然」という語調で、それが世間一般での常識であるかのような主張をします。
 その最たるものに「我が国の安全は日米同盟によって守られている」などという、安保条約およびそれによる日本の米兵駐留は絶対的なものという主張が挙げられます。
 しかしながら、マスコミが「当然の事」として書くことは、本当に疑う余地もない真理なのでしょうか。

 一例として、6年前に発生したイラク戦争において、当時の新聞が繰り返し「当然のこと」として主張していたものを挙げてみます。
 イラク戦争派兵に賛成する新聞社は、派兵に協力しない国および、一度派兵したものの撤兵した国は、「国際社会の笑いもの」になる、などと何度も書き続けてきました。
 しかし、実際に撤兵をした国が、世界のあらゆる国の政治家・国民から軽蔑された、などという事は一切ありませんでした。もちろん、撤兵のした結果、その国の世界での地位が下がった、などという事もありません。
 一方で、イラク戦争において「笑いもの」になった事例はいくつかあります。その最たるものは、「イラクを解放」などと言いながら、戦争が進むにつれて、イラク一般市民の虐殺やイラク兵の虐待が発覚し、自国民にも多数の犠牲者を出した、当時のブッシュ大統領でしょう。
 それに止まらず、イラクで「解放者」気取りで会見したら、記者に靴を投げつけられ、その記者は国内で高く評価された、などというオチまでつきました。まさに、「世界中の笑いもの」と言えるでしょう。
 さらには、「フセイン政権が生物化学兵器の使用を決定した場合、45分以内に配備できる」という報告書を提出し、後にそれが全く根拠のない事だと判明した、当時のイギリス首相などもかなりの「笑いもの」になりました。
 つまり、あの「国際社会の笑いもの」報道は事実と正反対だったわけです。
 だからといって、戦争賛成の主張をした新聞が、当時の自分たちの報道を省みて検証記事を発表する、などという事は一切ありません。

 話を戻して、「我が国の安全は日米同盟によって守られている」はどうなのでしょうか。マスコミは、それを大前提として、米軍基地が沖縄などにある事を絶対的な事として報じています。
 しかし、、既に「沖縄に駐留している海兵隊に、日本を守る任務など存在しない」という事は明らかになっています。
 そして、国内の米軍基地のほぼ半数がある沖縄県で、先日、9万人を越える参加者を集めて、基地反対の県民大会が行なわれました。マスコミが「当然」として報道している事が正しければ、彼らは日本の中でも最も手厚く「アメリカに守ってもらっている」人々であるはずです。
 ところが、彼らはそのようには感じていません。何しろ、沖縄では米兵が日本人に危害を加える事件は発生し続けています。先日、日本人をひき殺した米兵は、轢いた事実を認めながらも、それは「轢かれたほうが悪い」と堂々と言っていました。
 そして、アメリカ国内では許可されないような騒音をまき散らす訓練により、生活を脅かされているのです。沖縄では高速道路に「米軍演習中につき、実弾に注意」などという警告が普通に出ているほどです。だからこそ、県民大会にあれだけ多くの人が集まったわけです。
 このように目立った事実を積み重ねるだけでも、「我が国の安全が日米同盟によって守られている」という事が、「イラク戦争に協力しないと国際社会の笑いものになる」と同様に、事実に即していない事が分かります。
 もちろん、いくらそのような事実が明らかになっても、マスコミが検証や反省をすることはありません。そしてまた、事実に反する事を「当然のこと」と強引に主張し続けているわけです。つまるところ、70年前と本質的な所は代わっていないわけです。