軍隊が「守る」もの

 タイの内乱状態が一段落したそうです。戦いの一方の当事者は、前首相を支持し、現政府に反旗を翻しているUDDという団体です。それに対する政府側の当事者ですが、報道を見るとほとんどが「治安部隊」となっていました。
 この「治安部隊」の写真を見ると、明らかに軍隊です。また、所々で、彼らの事を「軍」と表現したり、「治安部隊」の活動方針についてタイ軍の幹部が発言しています。
 それらの情報をまとめれば、UDDと戦っていたのは「タイ軍の治安維持を担当する部隊」と考えるのが普通でしょう。

 つまるところ、軍隊が自国民に向けて発砲しているわけです。もちろん、そんな事は今に始まった事ではありません。歴史上、様々な局面で、暴力を伴う反政府運動を軍隊は鎮圧してきました。タイの件も、極めて自然な行動です。
 なぜならば、軍隊というものは、その国の権力機構を守るための武力だからです。
 ところが、その一方で、相変らず「軍隊は国民を守る」という事が大前提であるかのような報道・宣伝がされています。
 さらに日本においては、自国軍のみならず、アメリカ軍までもが「日本国民を守ってくれる」存在であるという宣伝までされています。もちろん、アメリカの権力を守るために存在する軍隊なのですから、日本国民の事を守るために行動するなどという事はありません。
 ただ、それを国民に知られると、政府・報道機関には都合が悪くなります。そのため、事実と異なる宣伝を続けているわけです。
 なお、最初に書いたように、タイの報道において、どう見ても「タイ軍」であるにも関わらず、報道機関は「治安部隊」と表現し続けました。これも、「軍の存在目的は国家権力を守る事で、国民を守ることではない」という事実を、少しでもぼかすためなのかもしれません。