結論ありきで創作される報道

 昨年末に行われた日航で整理解雇が行われました。経営破綻が現実となって以来、商業マスコミはその原因として「社員の給料が高い」「退職者の年金が高い」だのと、ひたすら、人件費の高さを「原因」として挙げてきました。
 その流れもあり、希望退職者が目標人数に達しており、四要件を満たしていないにも関わらず整理解雇をした、という異常な事態についても、当然の事であるように報じられています。
 しかしながら、この「日航は人件費で破綻した」というのは事実ではありません。実際に調べたところ、国際的にはもちろん、ライバル企業である全日空と比べても、日航における営業費用における人件費の比率は低いというデータがありました。ちなみに、2002年以降は、全日空のほうが常に高い比率となっているとのことです。

 そのような事実を無視して、商業マスコミは「パイロットの年収が2千万円だから潰れた」などと報道していたわけです。所属している人の年収が高いと潰れるのなら、ニューヨーク・ヤンキースなどはとっくの昔に経営破綻しているはずです。
 だいたい、人件費で経営破綻、などという事が発生する可能性は何パーセントくらいあるのでしょうか。最近の倒産情報を見ても、原因は消費不況に伴う売上減か、経営陣の失敗によるものがほとんどです。
 実際に日航も、ホテル経営や財務での失敗、政治的圧力に伴う不必要な投資などがあります。しかしながら、それが商業マスコミを介して伝わることはほとんどありません。
 これらの事から、商業マスコミが行っているのは、「なぜ日航が経営破綻をしたか」という原因究明ではない、という事が分かります。彼らのやっていることは、経営陣および政財界の主張である「日航は労働者のせいで破綻した」という「結論」を、読者・視聴者に浸透させる宣伝活動でしかないのです。

 ちなみに、整理解雇されて提訴した人が、あるテレビ局から「取材」依頼をうけたそうです。その内容は、「ハローワークで求職活動をしたり、公園で一人寂しくブランコに乗っている姿を取らせてくれ」というものでした。もちろん、その人は、実際にはそのような行動はとっていません。
 しかしながら、仮にこれを承諾していたら、そのテレビ局は、解雇された人が自らの意志で職安に行ったりブランコに乗ったと「報道」したわけです。
 これなどは、商業マスコミが、事実を元に結論を出しているのではなく、結論を元に「事実」を創作しているという姿勢の象徴例と言えるでしょう。
 25年近く前の国鉄の時もそうでしたが、大規模な不当労働行為が行われる際は、商業マスコミが政財界と一体になって、労働者を叩きます。言い換えれば、特定の労働者を叩くような報道が大量に流れれば、そこには情報操作による不当労働行為の計画が存在している、と考えるべきなのでしょう。