中国の「デモ」と東京の「抗議行動」

 中東各国の影響があったのか、中国でもネットに反政府デモの呼びかけがありました。
 当初の報道では「当局が書き込みを全て削除・遮断した」と出ていました。しかしながら、全ての書き込みを消す事は不可能だったようで、20日には、実際に呼びかけがあった場所には人々が集まりました。そして、官憲が暴力的に、集まった人々を捕らえたとのことです。
 何千キロも離れた場所で発生した事ですが、Googleニュースを「デモ」で検索すると、日本の各全国紙はもちろん、TV局さらには一部ブロック紙まで報じています。
 しかも、「立ち話をしただけで捕まるなど、北京と上海で少なくとも5人が逮捕された」などと、かなり細かい事まで報じていました。

 おかげで、中国当局がいかに民衆運動を弾圧しているか、またネット遮断などという手段をもっても、結局人々の動きを止めることができない、という事がよく分かりました。
 ところで、「デモ」で検索すると、中国や中東の他に、日本のデモも小さく出ています。それは、名護市の北にある高江という集落で行われている、米軍ヘリパッド建設に反対するデモです。
 この高江では、反対のために現場に来た住民に怪我をさせるなど、強権的な工事が進められています。それに反対する支援者が、中国と同じ20日に、東京を中心に全国数カ所でデモを行いました。
 しかしながら、この「デモ」の報道については、京都で行われたものを毎日新聞と京都新聞が、同じく福岡でのものを朝日新聞が小さく取り上げただけです。東京で行われた事については、レイバーネットという労働者の団体のルポしか出てきません。
 主催者のサイトによると、警察との折衝の関係で、「デモ」は行えず、アメリカ大使館への申し入れのみ行ったとの事です。しかしながら、検索語句を「高江」や「アメリカ大使館」などに変えても、結果は同じでした。
 「デモ」であるかどうかはともかく、200人もの人が参加し、2人の逮捕者を出したとのことです。主催者の発表した動画によると、逮捕された人が何か暴力などをふるったようには見えません。これでは中国の「立ち話しただけで捕まり、少なくとも5人以上逮捕」とさほど変わりありません。
 ちなみに抗議行動が行われたのは、新橋駅からアメリカ大使館の間です。つまり、全国紙各社は、北京や上海には現場に記者を貼りつけて詳細を報じているにも関わらず、本社から地下鉄で10分程度で行ける場所で起きている事は一切報じていないのです。
 全国紙は、常日頃から「日米安保は国家の基軸」などと主張しています。そして、その「基軸」において住民が迷惑を被り、それを支援する人が活動しているのです。ならば、仮にその行動に社として反対の立場していても、そのような事があった、という事実は伝えるべきでしょう。

 なお、一晩明けた翌21日になっても全国各紙のサイトでも、この都心で行われた抗議行動は完全に無視されていました。ある新聞の紙面を見たところ、中国で弾圧のあった現場に通りかかった市民が「何があったのですか」と尋ねた、という書き、中国政府の情報統制の状況を伝えていました。
 中国では、当局の強権とネット検閲によって集会を「無かった事」にしました。一方、日本では、当局の強権と、商業マスコミの「一斉無視」によって「無かった事」にしようとしているわけです。
 もしかしたら、彼らが中国の「デモ」を報じたのは、「これが我々が目指す体制」という「目標」を紹介したいがためなのだろうか、などとまで思った、商業マスコミの「報道管制」でした。