世論「調査」と消費税増税計画発表のタイミング

 先日、各マスコミが一斉に「世論調査結果」を発表しました。それぞれ「当社が行った世論調査によると」と発表しています。ところが、発表時期はもちろん、質問内容も全て同じような内容でした。
 その「結果」として報じられ、見出しとなったものの一つに、「過半数の人が震災復興の財源として増税を容認している」と「調査結果」がありました。それだけ見ると、国民の過半数が「震災が起きた以上、増税は仕方がない」と思っているかのように思えてきます。
 しかし、その質問内容を読んでみると、これは「復興財源として、増税・国債発行・増税と国債発行の双方」という三つの選択肢から一つを選ぶ、という形になっていました。
 日頃から、「国債により、日本の借金額は膨大になっている」という報道に慣らされている人が、この「三択」を提示されれば、確かに「増税」に○が一番多く集まる、というのは当然かと思います。

 しかし、復興の財源は本当にこの三種類しかないのでしょうか。実際に財源を捻出する方法としては、「とりあえず、政党交付金を廃止し、その分を被災地にまわす」「他に使う予算を復興にまわし、増税も国債発行も行わない」など、手段はいくらでも存在します。
 にも関わらず、複数の会社が行った「調査」であるにも関わらず、いずれも同じ選択肢しか提示しなかったわけです。これでは、最初から「国民の過半数が増税容認」という「調査結果」を、各社が同時に発表するために行った「調査」であると言わざるを得ません。

 そして、「発表」が掲載された翌日に、国家戦略相が、景気が良くなり消費税でという議論が出てくると仮定すれば、被災地への配慮は技術的には可能だと思うと、消費税増税の「運用方法」に言及しました。
 これも変な話です。実際に「財源捻出」は様々な方法があります。新聞社推奨の「増税」に絞っても、法人税・所得税など、様々な手段があるでしょう。
 にも関わらず、商業マスコミの記者は消費税増税の具体案についてのみ尋ね、閣僚は「被災地の配慮も技術的に可能」などという回答をしたわけです。
 一連のタイミングおよび報道内容を見ると、報道産業と民主党政府による「復興財源として消費税増税しかない」という世論誘導を行いたい、という意図が浮き彫りになります。
 それにしても、ただでさえ冷え込んだ経済が、震災でさらに落ち込んでいる時期に消費税増税を企てるというのには驚かされます。また、閣僚が「被災者の配慮は技術的に可能だ」というのも無責任極まりないと言いようがありません。
 ちょっと考えれば分かることですが、青森から千葉までの広範囲で被災し、しかも少なからぬ人は他県に避難しているのです。全ての買い物にかかる消費税の増税分をその人達だけ減免するなど、「技術的」には可能なのかもしれませんが、現実的には不可能です。
 公的な立場の人間なのですから、発表するならば、その「技術的」の実践方法について具体的に述べるべきでし、質問する側もその部分について確認すべきです。
 結局のところ、政治業者も報道業者も、以前からの方針である「消費税増税路線」を進めるために震災を口実にしているだけ、という事がよく分かった、一連の「調査」「報道」「発表」でした。