迅速すぎる決断

 イラクで日本人が拘束され、「自衛隊を撤兵しないと殺す」という声明が出されました。事件を起こした組織の「実績」から考えると、脅迫が実行に移される危険性は高そうです
 今回も自民党政府やその意を受けたマスコミにより、「捕らわれた日本人青年への批判」が行われています。それにより、世論の多くもそれに沿ったものとなっています。その結果、この事件についての認識は「こんな危険な時にイラクに行くのは愚かだ」などという「他人事」になっています。

 今回の事件に対して、小泉首相は即座に「自衛隊は撤兵しない」と明言しました。先週の土曜の夕方に「大地震の対策のために職場に戻るか」と「映画の舞台挨拶を見る」のどちらを取るかですらあれほど迷っていた人物と同じとは思えない迅速すぎる決断です。
 4月の事件の時もこの「撤兵しない」という決断は非常に迅速でした。この反応速度を見る限り、「日本人が捕まって自衛隊撤兵を脅迫された時」についてのマニュアルは派兵する前から完備されていたように思われます。
 私のこの推測が正しければ、スペインのように「日本国内でテロが発生し、自衛隊撤兵を求める犯行声明が出された場合」に対する自民党政府の対応もマニュアル化されているはずです。そこに記載されている行動規範は「国民の生命・安全を守る事を最優先する」なのでしょうか。それとも「テロに屈しない」なのでしょうか。

 今回の事件は、組織だって計画的に行われたようです。つまり「この類のテロ組織が具体的に日本人を標的にした」わけです。その「日本人を標的にした活動」がイラクにとどまらない事はすでにいくつかのテロによって実証されています。そのような中で自民党政府は「自衛隊派兵>国民の命」という事を迅速に決断しているわけです。我々一般国民にとっては「なぜこんな時にイラクに行ったのだ」などと論じる余裕があるほど、「他人事」の事件ではないと思うのですが・・・。

迅速すぎる決断」への3件のフィードバック

  1. 僕も、小泉さんの言い方が非論理的であることが気になっていました。
    「救出に全力を尽くす」と言うことは、救出のために出来ることはすべて可能性を探ると言うことが、論理的な理解だと思います。でも、最初から「自衛隊を撤退しない」と宣言してしまったら、要求を拒否すると宣言したことになってしまうでしょう。
    どうして、そのような行為と、「救出に全力を尽くす」という言葉が両立するのか分かりません。明らかに論理的に対立している言葉を並べているのではないかと思います。
    言葉が矛盾していても並べることは出来ます。でもそれは、「間違った言説を主張している」と普通は解釈されます。あれだけあっけらかんと間違った主張をされてしまうと、言われた方も思考停止になってしまうのかなと思うくらいです。
    「自衛隊は撤退しない」というのは、本音では仕方のないことだと思いますが、政治家だったら、本音でそう思っていても、交渉ではなんとか希望を引き出せるような「ふり」をするのが政治家の腕というものではないかと思います。小泉さんは、政治家としては失格なのではないかなと僕は思います。

  2. はじめまして。コメント有難うございます。
    非常に明快な解説ですね。
    おっしゃる通りで、小泉首相は一瞬たりとも「被害者が殺されない事」を最優先にはしていませんでした。
    あくまでも「アメリカの意に背かずに自衛隊を撤退させない」という枠の中で「救出に最善を尽く」していたわけです。
    >小泉さんは、政治家としては失格なのではないかなと僕は思います。
    日本の政治家としては失格でしょうね。「アメリカの属領・日本」における、本国に忠実な現地人支配者だと自覚して政治を行っているのでは、とまで思えてきます。

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