見出しになる「世論」

 日経新聞を読んでいたら、いきなり「『やむなし』28%」という見出しが目に入りました。読んでみたところ、在日米軍の再編にともなう日本の経費負担の電話による「世論調査」の結果記事でした。
 この「やむなし」というのは、米軍が海外に移転する際の費用を日本の税金から払うのが「やむなし」、という事です。有効回答の3割未満という「少数派」でしかありません。
 さらにこの「調査記事」を読んでみると、どこにも日本がいくら負担をするのか、についての情報が記載されていません。米国防副次官は「日本の負担は3兆円程度」と発言していますが、ちゃんとその額は、電話口で質問する際に伝えているのでしょうか。
 さらに、この「『やむなし』28%」の隣には、一回り小さい大きさの文字で「『国内分に限定を』40%」とあります。この「国内分に限定」というのは、在日米軍が国内の別の基地に移設する際は日本が経費負担をしてもいい、という意見です。
 普通、世論調査といえば、どのような意見が多いか、を紹介するのが建前のはずです.
ところがこの記事では、少数意見がより多い意見より大きい文字で紹介されているのです。

 また、この「世論調査」の案件は3つあります。一つはこの「在日米軍」で、後は「竹島を巡る韓国との関係」、最後は「小泉首相の靖国参拝」です。
 この「靖国参拝」ですが、「8月15日に参拝」が18%で、「8月15日を避けて参拝」が32%、としか書かれていません。果たして、残りの50%はどのような意見なのでしょうか。少なくとも「靖国に参拝すべきではない」が何%くらいいるかを明かさねば、調査の意味はないと思うのですが。
 憲法問題などを筆頭に、最近の新聞社の「世論調査」なるものは、質問内容や選択肢を露骨に操作して、自民党政府などの意向に沿った「世論」を作成する傾向が顕著です。ただでさえそのような「調査」だというのに、さらに「結果発表」においても、このような操作をしているわけです。
 これでは、もはや、世論の収集にも分析にもなっていません。そんな「調査」をやるのは、調査の手間はもちろんですが、質問されるほうにとっても時間の無駄でしかありません。
 同様に、読むほうとしては、これらの「世論調査結果」などは、新聞社の社説の一部だとでも認識していたほうがいい、という事なのでしょう。