サラ金業者の立場での政治

 大手業者の悪質行為による業務停止命令などから、サラ金の「グレーゾーン金利」問題が大きく話題になっています。そして、出資法の上限を利息制限法の上限に引き下げる、という動きになってます。普通に考えれば当然の話で、一つの国の法律で、金利の上限が二つ規定されている、というのも変な話です。さらに、その結果、片方の法律に違反している金利で貸金業者が大儲けし、客やその家族はもちろん、自社の従業員にも過酷な事を行っているわけです。
 ところが、その出資法の上限金利引き下げに対して小泉首相が「(金利が)高くても借りる人はたくさんいる。もし法律で(引き下げを)決めると、必ずヤミ(金融)がはびこる。貸す方も悪いが借りる方も悪い。これは一面の真理だ」と述べたそうです。
 この論法は、出資法の上限金利引き下げに反対しているサラ金業界団体の主張と全く同じです。これだけでも、小泉首相の「立場」というものが非常によく分かります。

 ところで、この「法律で定める上限金利が下がると、ヤミ金融がはびこる」という論法は本当なのでしょうか。業界側の主張は「2000年に出資法改正の際にヤミ金の摘発件数が増えた」というデータによるものだそうです。しかし、貸金業協会連合会などのサイトを見ても、出資法の上限金利とヤミ金の摘発件数に関する年次データみたいなものはありませんでした。
 そのため、私の調べた範囲内では上限金利とヤミ金の推移についての因果関係は肯定も否定もできません。とはいえ、一つ気になる事があります。それは、「ヤミ金」という言葉の定義が「上限金利を越えた利息を取る業者」という事です。ということは、上限金利が40%から29%なったら、それまで39%の利息を取っていた「合法業者」が金利を変えないと「ヤミ金」になる、というわけで、そのへんが「統計」に影響しているのでは、という気もします。
 もっとも、本質的な事を考えれば、この「上限金利引き下げとヤミ金増加」の関係はこのように論じる問題ですらありません。「ヤミ金」は違法であり、しかも、被害者のみならずその家族にまで経済的・肉体的苦痛を与える極めて悪質な犯罪なわけです。
 当然、行政の長たるものは、それが社会問題になるほどの悪質な犯罪である以上、適正に取り締まらせるのが仕事です。それを、あたかも、ヤミ金が存在し続けるのは至極当然の事であるかのように「借りる方も悪い」だの「上限金利を下げるとヤミ金融がはびこる」などと言っているわけです。
 つまり、貸金業界およびそれを代弁している首相の論法は「児童ポルノ法の上限を18歳未満から19歳未満にすると、児童ポルノ法違反者が増える。だから、児童ポルノ法違反を増やさないためにも、上限年齢を引き上げるべきではない」とか、「児童ポルノに出演する子供も悪い」と言っているのと同じです。

 先日、大手銀行が連結で軒並み史上最高の利益を挙げた、というニュースがありました。それらの大手銀行の多くは、ここ数年、サラ金各社との系列化を進めました。そのような「サラ金の取り込み・一体化」も、その最高益達成と無関係ではないでしょう。さらに、この「銀行の史上最高の利益」には、長引く低金利や増える手数料など、一般国民の負担も「貢献」しています。
 このブログで何度も書いていますが、「小泉改革による景気回復」なるものは、このように様々な形で富まざる国民の負担を増やし、それを大企業の利益につけかえた、というだけのものです。この金融機関の大儲けと、その業界を代弁する小泉首相の発言などは、その代表例の一つと言えるかもしれません。

サラ金業者の立場での政治」への2件のフィードバック

  1.  サラ金の論理をそのまま主張する小泉の正体が良く分かりますね。銀行を始めとする金融独占資本の利益のためなら庶民にはどんな犠牲でも押し付けるが、法人税などは引き下げられたまま。しかもサービス残業に対する労基法の規制を撤廃して不払い労働を合法化しようとしている。こんな政権、任期満了を待つまでもなく退陣させなければならないと思います。小泉路線を忠実に継承するという安部晋三なども串刺しにして批判していきましょう。

  2. おっしゃる通りで、本当に露骨なまでに「金持ちのために庶民から搾り取る政治」をやっていますね。「小泉」という個人でなく、「自民党」およびその類似勢力をなんとかしないと、本当に日本は大変な事になってしまいそうで不安です。
    なお、当方のミスにより、コメント掲載が非常に遅れました。深くお詫びします。

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