内閣府の「調査結果」とその報道

 昨日、内閣府が陸上自衛隊のイラク派兵を、七割が評価している、という「調査結果」を発表しました。何でも、9月下旬に全国3,000人を対象に行ったそうです。回答率は60.4%ほどで、「高く評価する」が25.6%で、「多少は評価する」が45.9%だったとの事です。
 そしてその「評価」の理由で一番多かったのは「イラクの復興に役立った」で、67.9%、ついで「戦闘に巻き込まれずに無事に任務を終えた」が45.3%だったそうです。
 この選択肢一覧を見る限り、質問書は「陸上自衛隊派兵はイラクの復興に役立った」という事を前提にしているようです。
 では果たして本当にイラクは「復興」しているのでしょうか。10月もアメリカの兵士がイラクで100人死んだそうです。「イラク新政府」の上に位置しているアメリカ軍の兵士ですらそれだけ死んでいるのですから、前線で戦っているイラク人の兵士は、親米側・反米側をあわせてどれだけ死んでいるのでしょうか。さらに、その戦闘に巻き込まれている一般市民はどのような生活をしているのでしょうか。
 さらに、イラクの現状を紹介しているブログなどを見ると、どう考えても「イラクが復興している」などという認識はできません。
 つまりこれは、存在しない「イラクの復興」および「復興に自衛隊が役立った」事を前提に、陸上自衛隊派兵の評価を「調査」しているのです。それこそ、「大本営発表」を前提にして「1930年代からの日本軍によるアジア侵略はアジアの人々に有益だったか?」という「調査」をやっているのと大差ありません。

 だいたい、その前提のおかしさを別にしても、この「七割が賛成」などという「調査結果」は信用に値するものなのでしょうか。
 この発表が行われた前日に、八戸のタウンミーティングで内閣府が教育基本法「改正」への賛成意見を言う事を参加者に命じた事件が発覚したばかりです。
 それに対し、内閣府は「質問依頼は複数あることを明らかにした」とまで発表しています。この事件はつまるところ、「自民党政府が自らの都合のいいように教育基本法を改悪するために、タウンミーティングで『国民の賛成意見』をねつ造した」わけです。
 しかし、Googleニュースを見る限り、この「国民の意見ねつ造」に対するその後の調査報道などが行われた形跡がありません。同じ「教育問題」でも「高校必修未履修」とはえらい違いです。そして翌日の紙面に載ったのが「イラク派兵を七割が評価」だったわけです。
 ついでに言うと、「イラク派兵調査」の回答率は約6割です。内閣府が自らにとって都合のいい前提と選択肢を設定したにも関わらず「評価」したのは3,000人中1,260人程度だったわけです。しかしながら、内閣府は当初は国論を二分したが、結果的に多くの国民に理解を得られたと発表し、それがそのまま記事になっています。仮に発表された結果を信用するとしても、前提のおかしさと、この賛成者数を見れば、そのまま「七割が賛成」などという見出しで報じる事ができる結果ではありません。ましてや前日の事件があったばかりなのです。
 内閣府の意図する事および、報道機関との関係が非常によく分かった二日間でした。