軍事脅威国家との経済提携

 日米安全保障競技委員会の協議が行われ、改めて名護市辺野古に新基地を作るなど、在日米軍の新施設建設を盛り込んだ合意をしました。そのような軍拡を行う理由として、中国の脅威があると発表されました。
 そして、それを報じた日経新聞の一面に載った記事でも、「中国の脅威」を煽るような書き方をしています。さらに「トモダチ作戦」なども持ち出して、「合意を受け入れるのは当然」という結論にしていました。
 ところが、その記事の隣には、三菱商事が国有企業と提携して、中国全土で食料事業を行うという記事が載っていました。一面に載るくらいですから、かなり大規模な提携なのでしょう。

 さらに、経済面では、三菱東京UFJ銀行が中国の国有石油化学企業大手と業務提携したという記事が載っています。他にも、中国の市長たちが経済交渉のため、集団で訪日する、という記事もありました。
 軍事で対抗し続けないと、いつ日本に攻めてくるか分からないと名指ししている国の直営企業と、日本を代表する商社や銀行が相次いで提携しているわけです。にも関わらず、このような「利敵行為」に対する批判は紙面に一切書かれていません。中国市長の集団訪日についても同様です。
 さらに、国際面では米中、対話を加速、決定的対立を回避という記事が、両国元首の顔写真付きで載っています。
 つまり、その紙面にある他の記事を読めば読むほど、「中国の脅威に対抗するために名護に基地を作る」という建前がいかに実情と乖離しているかが分かる、という構成になっているのです。

 なぜこのような不可解な主張をするのだろうかと思いながら読み進めていくと、興味深いコラムがありました。(※WEBの無料ページには載っていないようです)。
 そこでは、菅政権を批判した後、「そんなのを選んだ国民にも問題がある」という内容の事が書いてありました。さらに、消費税増税を主張すると選挙に負けるという風潮についても、増税を主張する政党には投票しないという日本人の「愚かさ」を嘆いていました。
 これらから総合的に判断すると、この新聞社は、「基地建設の口実として、『中国の軍事脅威』を使って煽れば、いくら同じ紙面に日中や米中の提携記事が沢山載っていても、愚かな国民は素直に信じる」と思っている、という結論に達することができます。
 そう考えると、ある意味、見事とも言える紙面構成でした。だからと言って、この新聞を読む人が、制作側の期待通りに「中国とは経済的に提携が一層進んでいるが、軍事的には脅威だ。だから名護に基地を増設すべきだ」などと信じてあげる必要はどこにもない、とも思いました。