「公正」の基準

 番組改変で問題になった、「女性国際戦犯法廷」について、当時者の安倍氏・中川氏はもちろん、右よりのマスコミが「公正ではない」と批判しています。ただ、その批判を見ると、「その裁判では当時の国際法に基づいて、日本や天皇の行為を裁いているが、その判決の○○は国際法上、明らかに誤っている」というように、「裁判」を正面から批判しているものではありません。
 その代わりに「昭和天皇に有罪判決を出した」とか「北朝鮮の人も加わっている。あれは工作員だ(※工作員である具体的証拠の提示はなし)」などと、読者・視聴者の感情を刺激するような語句を連ねて、「不公正だ」と決め付けています。
 また、安倍氏は何度もTV出演をして、自分の正当性を主張しています。ある番組に至っては、司会者は、万が一にも安倍氏に「失言」が出ないよう、細やかな気遣いのもとに質問していました。
 それらのマスコミは、放映されなかった番組の内容や、「女性国際戦犯法廷」を「不公平だ」と批判しています。しかしながら、これらの論調や司会者の態度を見ると、彼らのも十分「安倍氏に偏った報道」をしています。報道される量も、安倍氏・NHK側に比べ、「女性国際戦犯法廷」側の主張の類は、ほとんど見られません。
 もっとも、安倍氏・NHKの主張が出れば出るほど、NHKと自民党の密着ぶり、並びに彼らがそれを当然と認識している事が伝わってくる、という皮肉な結果にもなってはいますが。
 NHKにせよ、安倍氏・NHK側に立つマスコミにせよ、彼らにとっての「公正」の条件はまず第一に「自民党政府に認められる事」なのだろうか、と思いながら「安倍氏側に偏った報道」を見ています。

「反論」からわかるもの

 4年前にNHKが放送しようとした従軍慰安婦関係の番組が放映直前に内容を大幅に変更される、という事がありました。そのプロデューサーが内部告発をし、それを朝日新聞が報じました。それに対し、当事者とされた自民党の安倍幹事長代理が「反論」していました。
 しかし、その内容は「私が(NHK関係者を)呼びつけたということはない。事実誤認だ」「(番組が)ずいぶんひどい内容になっていると聞いたので『NHKですから公平公正にやってくださいね』と話した。」といったものでした。
 要は、「NHKには、自民党政府の意向に従わない番組が放映されそうになると、こちらが呼ぶまでもなく、自民党の政治家に注進に来る人がいる」「そうやって来た人間に対し、放映前にその番組の内容について、『どのような立場で放送すべきか』を指摘していた」というわけです。
 なんか、「朝日が批判的な報道をしたから怒っている」だけで、「NHKと自民党政治家の親密ぶり」や「自分達番組の放映内容について事前に意見を述べ、その結果番組の内容が大幅に変わった事」などが露見した事自体については、別にどうとも思っていないようです。
 彼らを擁護した小泉首相を含め、「自分達の考え方に反する事は『公平公正』ではない」→「そうである以上、報道内容について『指摘』をするのは当然の権利」と考えている事がよく分かった「反論」でした。

反対意見を封じるための法案

 改憲のための「国民投票法案」の成立に向けて自民・公明の議員が動いているそうです。この法案がどんなものかについては、「憲法調査推進議員連盟」(改憲議連)のサイトにも載っていないません。しかし、平和を実現するキリスト者ネットというサイトに載っていた憲法改正国民投票法案情報などを見ると、その異常さに驚かされます。
 なにしろマスコミは改憲案の論評や批判は厳しく禁じられるにもかかわらず、マスコミに憲法改正の広告を記載させる行為は規制の対象にならないなどと、実質的に巨額の広告費を出す事により、マスコミに出る情報は、自分達の意見にあうものばかりになるようにしています。
 さらに、公務員の運動は事実上、禁止だの重い「国民投票妨害罪」を設ける(演説や文書による扇動罪も設ける)だのと、反対運動になりうるものは、激しく規制しています。その一方で、なうえに、重大な違反があっても告発は30日以内までなどと、仮に不正行為が行われても、告発しにくい仕組みを作っています。

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