月別アーカイブ: 2004年6月

社風?

 読売新聞の渡辺社長が、自分の計画する「プロ野球再建案」に疑問を呈した、古田選手会長を「バカ」呼ばわりしました。世の中多種多様の意見があり、その中には自分の考えと正反対の意見もあるでしょう。しかし、言論機関にいる人間が反対意見を言う人を「バカ」と言うのはいかがなものでしょうか。ちなみに、対立意見に対する具体的な反駁は特にありません。「自分のやり方が絶対正しいのだから、反対者はバカだ」という論法(?)です。

 一方、18日の読売新聞は、『国を愛する心』でなぜいけないという社説を掲載しています。
 表題から分かるように、現在進められている「愛国心教育」を推進しようとする文章です。やれ「中教審答申」だの「現在の学習指導要領」だの「国民の祝日に関する法律の建国記念日の部分」だのを持ち出して、愛国心の涵養(かんよう)は、国家主義とはまったく別の問題なのだ。と結論付けています。いくら「愛国心導入勢力」の「成果」を羅列したところで、そのような「結論」は導き出せないと思うのですが。だいたい、この論説委員氏が引用した文章のどこにも「国家主義との相違点」など書いてありません。
 さらに、60年前のアジア侵略を元に「日の丸」「君が代」を批判する人々は一部のイデオロギー勢力と切り捨てています。社長ほど露骨ではないですが、「そんなバカは相手にする必要がない」という意味なのでしょう。
 まあ、好意的に解釈すれば、社長と論説委員のものの考え方が極めて似通っている意思疎通の優れた会社と言えるのでしょう。ついでに言うと、我が家にいらっしゃる読売関係者の方の、こちらの断りすら許さないような一方的なしゃべりも、この社長の談話や論説委員氏に通じるものがあります。グループ全体の意思統一が優れていると言えるのかもしれません。

 なお、当サイトでは「愛国心教育」に関する長文を戦前の「愛国心」は現在に通用するのか「愛国心」と「公徳心」としてまとめてあります。よろしければ、ご覧いただければ幸いです。

多国籍軍参加の「説明」

 アメリカで「ご主人」に対して多国籍軍参加を明言した首相が、遅ればせながら日本で多国籍軍参加の「説明」をしました。その説明によると、司令部の指揮下には入らず(中略)人道復興支援活動等を行う。この点は多国籍軍及び統合された司令部の主要な構成国である米英両政府との間で了解に達している。との事。マスコミもそのまま報道しています。
 ところが、野党との党首会談ではこの「了解」は「口頭でしかるべき人に了解を得た」などという、いい加減極まりない「了解」である事が判明しています(参考・民主党サイト共産党サイト)。別にこんなの軍事機密でもないでしょうから、本当に「了解」を得ているなら、具体的に話せるはずです。
 まあ、現在派兵中の自衛隊についても、「独立している」みたいに言いながら、連合統治任務軍のサイトには「自衛隊は英国の指揮下」とあった、と書かれていた、という事がありました。今回もおそらく同様のオチなのでしょう。

 さらにすごいのは、自衛隊参加が憲法の枠内と判断する根拠を問われた首相が、「今までの活動を停止することがイラクの国民に喜ばれるか」と答えた事です。自衛隊が輸送した米軍が、イラクでいかに残虐な事をやり、その結果、荷担した日本の評価がイラクでどうなったのか、という事はここ数ヶ月の事件から明らかです。にもかかわらず、よくもそんな事を言えるものです。なんで正直に「イラク国民のため」などと露骨な嘘をつかず「今までの活動を停止する事がアメリカ政府に喜ばれるか」と本音を語らないのでしょうか。

 かつてヒトラーは「嘘も何回も繰り返せば真実になる」と言ったそうです。もしかすると、首相はそれを意識してこのような嘘をつき続けるのでしょうか。実際に首相をはじめとする政府筋の嘘を無批判に報じつづけるマスコミによって、「嘘が真実になる」事例が4月にもありました。この状況を見ると、今の日本がそのような方向に着々と進んでいるようで、非常に不安になります。

資産運用で失敗したのは17%だけ?

 日経BP社のメルマガに過半数が資産運用中、目減り運用は全体の17%というのがありました。その号の表題・トップ記事にもなっている「一押し情報」です。
 読んでみると「82.1%が資産運用に前向き」「過去1年での運用利回りを質問したところ、『0~20%未満』が過半数を超えて56.0%」「一方、運用によって目減りしてしまった方は、17.0%にとどまりました。目減りした割合も、『0未満~-20%』が圧倒的に多く、損失は最小限に抑えられているようです。」などと、「資産運用は、皆が儲かる上にリスクもたいしたことがない」という「データ」が目白押しです。
 この場合、一体何をもって「資産運用」と言えるのでしょうか。最初に見た時は「資産運用=株式投資」なのか、と思っていました。しかし、この記事の後段には、運用方法は、「貯蓄型重視」が42.1%に対して、「投資型重視」が32.0%と、やはり堅実な運用に重きが置かれていることがわかります。という一文もありました。
 という事は、銀行などに金を預けて利息を貰えば「資産運用をしている」となるわけです。ついでに言うと、このアンケートでは、残る25.9%の人の資産運用方法についてのデータは提示していません。その内訳も提示してくれないと、「資産運用の実態」が見えてきません。

 そうなってくると、「過去1年での運用利回りを質問したところ、『0~20%未満』が過半数を超えて56.0%」などという回答紹介は全く持って無意味だという事がわかります。日本円の預金のみ、という「資産運用」をしている人は全てここに含まれます。実際に、「分析結果」として細かくは伺いませんでしたが、おそらく微々たる低金利に甘んじていらっしゃる方が大半ではないでしょうか。などと書いてあります。
 そうなると、「0%~20%」というのはあまりにも大雑把すぎます。500万円を元手に株式投資に成功して600万円にした人も、定額預金にして0.03%の利子を得て500万1,500円になった人も同じにする、というのは無理がありすぎます。現在の金利を考えれば、「0%~1%未満」と「1%以上20%未満」に分けるか、「普通預金」「定期預金」のみの「資産運用」は除いたデータを提示するしないと、適切な情報とは言えないのではないでしょうか。
 当然、こうなると「目減りしてしまった人は17%」などという「データ」も何の意味をなしません。「資産運用」している人全体のうち、「目減りのリスクがある運用方法を利用している人」の比率がどこにも書いていないからです。極端な話、1,000人のうち560人が普通預金・定期預金だけしかしておらず、173人がプラマイゼロで、97人が投資で儲け、170人が投資で損をしても「目減りした人は全体17%」となってしまいます。
 このような結果でありながら、最後は読者の皆さんは手堅く、非常に堅実に資産運用されているという印象を受けました。でもいくつかの景気動向指数が好転し、景気にも薄日が差してきました。企業業績も活況を呈しているようです。そろそろ多少の“冒険”もよいのではないでしょうか。などと、まとめて(?)います。

 質問結果の恣意的な提示と、この結びから見る限り、どうやらこの「アンケート結果」は、読者の貯金を株式投資に振り向けさせるために作られた記事のようです。
 まあ、国策でもあることですし、証券会社などから広告を貰うためにも、こういう「記事」は必要なのでしょう。別に、これを真に受けて投資した人が大損しても、この会社や記者が責任を取る必要はどこにもないわけですから。
 「ナニワ金融道」で先物業者が「赤の他人にわざわざ儲け話を電話するようなマヌケがいるわけないんやけどなー」と言う場面があります。この「真理」はあやしげな業者の勧誘電話のみならず、大手出版社のメールマガジンやWEBサイトにも当てはまるのかもしれません。