ここのところ、社会保険庁の「不祥事」に関する報道をよく見ます。業者に便宜を図って約4億4600万円分受注させ、その見返りに数十万円貰った課長が逮捕されたという事件は、確かに純粋な不祥事です(ただし、それが社会保険庁に限る特殊な例とは思いづらいですが)。
しかし、職員の親睦草野球大会などに年間136万円を保険料から支出していたなどというのを、社会保険庁大阪社会保険事務局がマスコミ発表した、という記事などを見ると、よくそんなもん調べて、わざわざ発表するな、と思ってしまいます。
もちろん、草野球だろうとボウリング大会だろうと、保険料を使って行う事が適切だとは思いません。しかし、保険料の不適切な使途というならば、もっと多額のものがあるのではないでしょうか。
たとえば、年金保険料無駄遣いの象徴とされる「グリーンピア」。この存在並びに非効率的な経営については、どのマスコミも取り上げます。しかし、この大半は、歴代厚生大臣や、議員に立候補しようとした厚生官僚の地元に造られた、という指摘については、いくら検索しても、マスコミのサイトにはなく、議員などのサイトにしか掲載されていません。
そのうちの一つである、グリーンピア二本松の赤字だけで80億円だそうですから、それだけで野球大会が5,882回も開催できます。そのような大赤字の根源については明らかにせず、野球大会を調査する社会保険庁の上層部の意図はどこにあるのでしょうか。
そのような傾向を受けてか、今週の週刊文春はマッサージ器に観劇チケット…ムダ遣い総額6300億円社会保険庁全職員に告ぐ一人3700万円を返還せよ!という記事を掲載しています。マッサージ器もグリーンピアもいっしょくたにし、全て「年金官僚」が悪いとしています。
年金に関わっている人にも、自らの利権のために数十億円の保険料を使いまくった大臣や高給官僚がいる一方で、こき使われて過労自殺した青年職員もします。にもかかわらず、大臣から末端の職員まで一つにまとめて「ムダ遣い総額」を「職員の数」で割り算し、全て均質に同罪、としたわけです。国民に一般の職員を敵視させ、根源的な問題から目をそらさせるという、自民党政府と親密なマスコミの常套手段の記事と言えるでしょう(※この「常套手段」については本サイトの長文・現代に生きる「分断支配」の構図に詳細を記載してあります)。
なお、自民党議員でも、この問題に対して、首相や歴代厚相を批判している人がいます。ただ、結局この責任はいずれ明確にすべきだが、私は事ここに至っては年金財源に間接税を充てる以外にはないと考えている。との事。党内レベルでは一応首相などと対立しているにも関わらず、その相手の責任は先送りするが、国民の負担増については明確な方針がある、というこれまた象徴的な見解です。
昔の国鉄にせよ、最近の道路公団にせよ、巨大赤字が出た国営事業が問題になると、「赤字の根源への批判をずらし、末端の職員レベルの問題を槍玉に挙げて攻撃して世論を誘導」→「その流れで『改革』を行ったら、自民党の利権はそのまま温存」という結果を導く、という政治とマスコミの連携プレーがありました。今回の年金もその方向に持っていこうとする意志があるように思えます。